皆様ご機嫌いかがですか?

毎年イギリスの暮らしをコンセプトにインテリアセミナーを開催しております。
セミナーの準備のために私自身も様々なところへ出かけ素敵な人々に出会って参りました。
インテリアはそれを表現する者のライフスタイルそのものを表します。

私達は心が安定しているとき花を飾ったり手仕事による作品で家を整えたりします。
美しい家はその人の心の幸せを表現しているのです。

幸せの価値観は千差万別です。インテリアもライフスタイルも人それぞれ。
思う存分自分らしさを発揮し豊かな暮らしを作り上げたいものです。

2015年1月 荻野洋子







January 2015

1月のインテリアレポート:

1回目は仕事仲間であり尊敬する友人のMrs. Ann Lingardの家です。
Ann(アン)はEast Sussex(東部サセックス州)のRye(ライ)に暮らすアンティークディーラー。数年前に仕事を退き現在は大好きな庭造りや旅行を楽しむ理想的な暮らしをしています。
彼女の家を訪ねるたびに古き良きものを上手に使いこなしている豊かな暮らしぶりに感心します。


       
 1月にしては珍しい晴天。Ryeの駅から徒歩5分のこの家は元鉄道で仕事をする人々が寝泊りをするために建てられたそうです。Annが購入したとき家はボロボロでお庭も雑草だらけだったとのこと。丁寧に修復をし今は見違えるほどきれいになりました。  お花好きのアンはお花を絶やしたことがありません。お庭へのアプローチにクロッカスの寄植えをしています。この黒いアイアンの植木鉢は雨樋の受け部分だったそうです。アンティークディーラーの彼女はアンティークの使い方が絶妙です。  600坪ほどの広いお庭は春から秋の終わりまで次々と花が咲きいつ訪ねてもにぎやかですがさすがに1月の庭は静かです。ウィンターガーデンでも美しく見えるように木や花壇が配置されています。  バックガーデンの野菜畑も冬の朝は霜が降りて収穫するものはありません。この時期アンは土作りにせっせと励んでいます。
       
 1月のクリスマスローズ。原種なので丈夫です。  アンの家で感心することのひとつ。お水をためるタンクが屋根のあるところには必ずついていることです。雨水だけでなくバスルームのシャワーで使用したお湯も別のタンクでためています。夏はお水が不足しがちなのでお庭の植物たちのために準備しているのですね。  アンの家の入り口は防寒のため風除け室が付いています。ドアを開けると正面に小さなトイレと手洗い場があります。お庭でお仕事をしているとき室内に入らなくても手を洗ったりトイレを使ったりできるので便利です。  玄関脇のトイレなのですが中はローラアシュレイの壁紙が貼られ色を合わせた絵も飾られています。小さな手洗いシンクはロイヤルドルトンのアンティークでした。
       
 狭いスペースですが小さなところまでおしゃれな心配りがされています。アンティークパインの収納棚の中には洗剤やトイレットペーパーなどが収納されています。  私が一番好きなコーナーは窓辺の棚です。アンはこの棚で夏の花の苗を育てています。
適度な湿度とラジエターの暖かさですくすく育つそうです。
 風除け室から室内への扉を開けると中は広いワンルーム。中央に両サイドから使用できる筒型のマントルピースがでんと居座り部屋をリビング側とダイニング側に分けています。セントラルヒーティングを使用しているので現在暖炉は使わずただのオブジェと化しています。  右側のダイニングコーナー。朝食のテーブルです。愛犬のベニーのお散歩の途中で新聞を買ってきてくれました。
       
 アンは数年前に引退をしたときにキッチンを大改造しました。以前はアンティークのシンクが入り素敵な風情はありましたがもっと使いやすく快適なシステムキッチンを入れました。  4畳ほどの空間の4方の壁面にぐるりと人口大理石のカウンターを回しました。中央に立つとすべてが手の届く範囲に整理されておりお料理しやすくなりました。  イギリスではキッチンの中にドラム式洗濯機が入っているのを良く見ます。お料理といっしょにお洗濯もしてしまう、忙しい主婦にとって便利なのでしょうね。  以前のアンティークキッチンで使われていたホーローのキャニスターもアルミのお鍋も全部継続して使われています。
       
 朝ごはんにスモークキッパー(ニシンの燻製)を作ってくれました。長く滞在しているとアジの開きのようなものが食べたくなってしまいます。  キッチンの改修をしたときガスをやめてIHヒーターにしました。これなら消し忘れも安心。
 中央暖炉の左側はリビングコーナーです。いつもきれいに片付き居心地の良い空間になっています。  リビングの奥に仕事用のデスクとコンピューターのコーナーがあります。写真には写っていませんがデスクに座ると正面の窓からお庭が見渡せます。私はこの静かな美しい場所が大好きです。
       
 お二階のアンのベッドルーム。ベッドの足元に置かれたアンティークパインのブランケットボックスの上は季節によって置かれるものが変わります。寒い季節はブランケットが、夏は麦藁帽子がおいてありました。  今は使われていませんがこのお部屋にも小さな暖炉があります。壁面にあるだけで風格がでますね。  アンのベッドルームのお隣はゲスト用の寝室です。私が遊びに行くと伝えるとベッドサイドのマホガニーのチェスとの上にお庭の花を飾っておいてくれます。ウェルカムを伝えるのにこれ以上の言葉はありません。  アンの部屋とゲストルームの間に共有のバスルームがあります。広さ6畳ほどのスペースのなかに洗面台、バスタブ、トイレ、お化粧コーナーが素敵なお部屋のように配置されています。このバスルームを使うたびに日本のユニットバスの味気なさをしみじみ再確認してしまいます。
       
 キッチンのリフォームをするときにバスタブも大きなものに代えたそうです。壁紙とカーテンはローラアシュレイのもので統一しロマンティックな雰囲気です。  お風呂に入りながらお庭が見えます。  また1階に戻ってきました。大きなテラスドアからお庭へのテラスに繋がり夏は開け放したまま終日お庭ですごします。  アン(左)と娘さんのジュディ。ジュディはすぐ隣の村に住んでおりアンの手伝いによく訪ねてきます。一人暮らしのアンは近くに家族がいるので寂しくないし、一人で自立できるうちは悠々自適に暮らすことを願っています。


春から夏にかけてお庭が美しい花で満たされる頃またアンの家をご紹介します。

2015年1月 荻野洋子